発達障害とIQ検査とワーキングメモリー
発達障害とIQ検査とワーキングメモリー
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今日は、ちょっと頭がこんがらがる様な話を書きます。
当院は、発達障害の外来を行っています。おもに当院で診断している発達障害は、注意欠如・多動症(昔の注意欠陥多動性障害)、自閉症スペクトラム障害(昔の広範性発達障害やアスペルガー障害)、発達性協調運動障害の組み合わせです。
ここに音韻認識障害や視知覚認知障害が加わると、発達性ディスレクシア(発達性読字障害)~書字障害、数概念の障害などが加われば算数障害という事になります。
また、これらの障害に、二次障害として、睡眠障害、うつ病、重篤気分調節症、双極性障害、強迫性障害、社交不安障害、反抗挑戦性障害、行為障害などが合併して不登校が出来上がってたりします。
こういった方々に投薬を行い、症状を緩和させたところで、的確に行動療法を入れて、多動や反抗挑戦性障害、行為障害を無くし、作業療法や感覚統合療法を入れて不器用さ、多動性を改善させ、特別支援教育を入れて学力の低下を防止し、ソーシャルスキルを教育していきます。
(作業療法や感覚統合療法は主にさくらクリニックの言語聴覚士の和田さんにお願いして施行していただいています。先週は、当院でカンファレンスを行い、患児の治療方針や療育方針について、話し合いました。今後は学校の先生も交えてskype会議を定期的に行ってみようという事になりました。)
IQと発達障害
これらの発達障害の診療で知能検査は長く重宝されてきました。
IQ(知能指数)、とくによく行われているWISC IVなどは、様々な知的検査(積み木、単語理解、絵の概念、数唱、符号・記号並べ等)を行い、言語性知能、知覚性知能、処理速度、部分的な言語性ワーキングメモリーなどの各分野での正常からの逸脱程度を計測します。
IQ=100が丁度平均で、標準偏差が15となるように作られており、一般的に知能低下はIQ75以下からという事でした。各種手当や手帳を得るために知能検査が必須で、IQによって重症度が区分けされ、手当てが決められていました。
しかし、最近はIQが生きづらさを必ずしもあらわさない、つまり、IQが正常でもまともに社会生活が送れないという事が徐々に認知されてきて、アメリカ精神医学会の改訂診断基準 DSM-5ではIQによって自閉症の重症度を分類するのではなく、どれだけ援助を必要とするかで重症度を分けて行こうという方向になってきました。ちょうど日本の福祉関連の診断書でも、過去はIQが低くなければ特別児童扶養手当は認定されていなかったのですが、最近はどれだけ援助が必要な状態か?が重要視され、認定基準となってきています。
また、特別支援教育の世界でも、昔は、発達テスト(主にWISC)の結果に基づいて教育方針を立てていましたが、IQと学校の成績が相関しないという事から、あまりあてにならないという事になり、ワーキングメモリーという考え方が重要視されてきました。(IQテストで小学校入学テストをおこなって、成績上位を入学させても、30%程度の学習困難者が必ず入ってくるんだそうです。)
ワーキングメモリーって何?
ワーキングメモリ (working memory:作業記憶,作動記憶) とは,短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。
(わかりやすく言うと何かを覚えておきながら、違う考え事をしても、覚えておいた内容を忘れない能力のこと。)
これは心理学上の名前です。最も代表的な仮説としてBaddeley ら(2009) のモデルがあります。
このモデルでは、脳の中には、言語性ワーキングメモリーとして音韻ループ、視覚性ワーキングメモリーとして視空間スケッチパッド、それらを統合するエピソーディックバッファ、が存在し、中央実行系がそれらを統括し、最終的に長期記憶装置につながるというモデルです。ただし、音韻ループ、視空間スケッチパッド、エピソーディックバッファ単独では、短期記憶という呼び名になります。
本来のワーキングメモリーは、これら3つのバッファと中央実行系の連携能力の事を意味します。よって、ワーキングメモリー量に影響する因子は、3つ(中央実行系の処理能力+各種バッファの記憶量と記憶減衰時間+両者を結ぶ通信経路の伝導速度)です。
(※余談ですが、この通信経路として大事な場所に前部帯状回があり、これはADHDの責任領域の1つでもあるため、ADHD児がワーキングメモリーの低下をきたし易い理由となっています。)
この仮説は、現在のFunctional MRIなどによる検証実験で各々の役割を担う脳内部位が特定されてきております。
以下は主に言語性ワーキングメモリーについて述べてみます。
※通常、勉強するとき、多くの学生は本、教科書、参考書などを『読む』事で学習しますが、この作業で主に使用する経路が言語性ワーキングメモリーです。このため、この経路の障害はすべての教科の学習の障害となりやすいです。
音韻ループ
黙読するとき、多くの人(速読者は除く)は心の中で声を出して読んでいます。その時に使う部分です。音韻貯蔵庫に入った言葉は、構音リハーサルによって、消えそうになっては、よみがえるという事を繰り返しながら、言語の短期記憶が維持されます。
※これは、主に『意味を理解し難い文』や、『初めての言葉』などを読むときに顕著に表れます。意味の分かりやすい文や、初めてではない言葉の場合は、見た文字や聞いた言葉の内容が脳内意味辞書(レキシコン:下後頭側頭回)で即座に意味経路から画像経路に変換されるため、音韻ループを介さないと言われています。(いわゆる速読と言われる手法)
たとえば、7ケタの数字を覚えようとします。あなたは、その数字を心の中で唱え続けることが出来る間は、その数字を忘れません。この心の中で唱えるという行為を構音リハーサルと言います。構音リハーサルをかけながら覚えておける最大の数が短期記憶力になります。
覚えていられるのは、その7ケタの数字が心の中で唱え続けていられるからで、もしその時、目の前に絶世の美女、美男子が現れて、声をかけられたら、どうなると思いますか?
その美女・美男子との会話にメモリーが使われてしまい、7ケタの数字を唱え続けていられなくなり、徐々に数字が消えていきます。
この時、美女・美男子との会話をしながら、なんとか記憶にのこっていた数字の数があなたの言語性ワーキングメモリーの量という事になります。
通常成人は5~7個の数字や言葉を保持するワーキングメモリーを持っています。この、実行機能を使いながら保持する言葉の数をチャンクと言います。
通常の成人は5~7個の数字を保持できます。言葉の場合は、大体2~4語(チャンク(chunk))です。これは年齢の影響を受けます。
言語性ワーキングメモリを調べる日本語Reading Span Testの結果では、平均では、小学校1年性で1チャンク、5年で2チャンク、大学生で3チャンク程度です。加齢とともに低下していきます。
もうすこし、実際的な話にしましょう、今、子供が96×24という計算を筆算でしようとしています。
まず、4×6を行い24という数字をだします。で、4は書いておいて、2は頭に覚えます。覚えておきながら次に4×9を行い36を出してきます。その36と覚えておいた2を足して38にして、先に書いておいた4の前に書いて384にします。
とここで、頭に覚えておいた2の部分が言語性ワーキングメモリです。これも、筆算であれば、1チャンクあれば、十分に解ける問題です。
では、次に学校での授業の場面を想像しましょう。
学校の先生が以下のような話を授業中に黒板に書いたり、話したとします。
「リンゴが23個あります。5人で同じ数だけ分けて、余った数を求めなさい」
この時、短期記憶に入れるのは、①リンゴ、②23個、③5人、④同じ数、⑤余りは? とい言った5個のメモリーでしょう。
これを立式するわけですが、立式にまたメモリーを使います。
メモリーを使いながら、23÷5=を行うわけですが、⑤余りは?の部分だけは覚えておく必要があります。この⑤の部分が言語性ワーキングメモリで、つまり、この問題で必要な言語性短期記憶(メモリー)は5チャンクで、言語性ワーキングメモリーは1チャンクという事になります。
では、この問題を少しいじって、以下のようにしてみます。
「リンゴが23個あります。大人8人で同じ数だけ分けて、余った数を子供3人に同じ数だけ分けてあげます。子供がもらえるリンゴの数を求めなさい。」
この時、短期記憶に入れるのは、①リンゴ、②23個、③大人、④8人、⑤同じ数⑥余りを⑦子ども⑧3人⑨同じ数 といった9個のメモリーでしょう。
メモリーを使いながら、23÷8=を行うわけですが、⑥余りを⑦子ども⑧3人⑨同じ数 の部分だけは覚えておく必要があります。この問題で必要な言語性短期記憶(メモリー)は9チャンクで、言語性ワーキングメモリーは4チャンクという事になります。
しかし、この解き方は純粋に言語性ワーキングメモリだけで解こうとしていますので、これでは、小学校3年生では、そもそも2チャンク程度しかありませんので解けない子供が出てきます。そこで、
- 覚えておくべき部分に下線を引かせたり、どこかに書かせたり、
- 問題を二段階に分けて問う方法に変えたり
- グラフや絵に書いたり
して解きやすくします。これを「方略を教える」と言います。まさにこれこそ教育であります。
- はメモリーできない分を書かせる方法で、欠点は字が汚いとミスの原因になります。
- は二段階に分ける事に慣れていないといけません。また、自閉症のように、変化を拒み、今まで分けずに解いてきたのだから、今回も分けたくないと意地をはる子どもはうまく解けません。また、自閉症の子供によくあるのですが、なんで先に大人から分けるのだ?先に子供からなぜ分けないのだ?などと余計な事を考えると、その間に、短期記憶した内容が消えたり、数字の8が良く似た形の3に変わったりします。
- は前述の視覚性ワーキングメモリーを使用する方法で、大概はうまくいきますが、視覚性にも問題がある子どもはうまくできません。
教育とは、こういった方略を教えながら、言語性、視覚性ワーキングメモリーを使用しつつ、最終的な解き方をエピソーディックバファを通して長期記憶に入れていく作業であり、これが、Alloweyの唱える、学校成績と優位に相関するのは、IQではなく、ワーキングメモリーであるという根拠になります。
つまり、その子供のワーキングメモリーの分布に応じた方略を使って長期記憶に入れやすくしてあげる事こそが教育であり、そのためにも障碍児のワーキングメモリアセスメントが重要であるというのです。
流動性知能と結晶性知能
Cattell,R.Bは、知能(IQ)には流動性知能と結晶性知能の主に二種類あると提唱しています。
流動性知能とは
新しい場面への適応に必要な能力の事で、推論する、思考力、暗記力、計算力などが挙げられ、集中力やワーキングメモリも流動性知能の一部です。
しかし、Ackermanらはワーキングメモリと流動性知能に関する分析で、ワーキングメモリと流動性知能が共有する部分は20%に過ぎない事を示しています。
結晶性知能とは
過去の学習経験が土台になる専門的または個人的な能力であり、流動性知能が土台となっています。免許や学位などの専門的な知識や、料理などの日常の習慣、長年にわたる趣味の手順や方法なども結晶性知能にあたります。
IQテスト結果は主に親の収入や裕福さと正の相関があります(※つまり結晶性知能は親の裕福さと相関する)が、ワーキングメモリは全く差がありません。
※裕福な家庭の子供は、家庭教師など、より手間とコストをかけて知識を教育されており、その結果結晶性知能が高くなっている。
Alloweyの言う「IQテストには、学力に無関係な部分が多く含まれている理由」は、この結晶性知能のパートが多く、流動性知能を測っていたとしても、ワーキングメモリの占める割合は20%と低く、必要な検査が足りないからではないかと考えられます。
WISC4に新しく含まれたワーキングメモリの検査、語音整列は、単音ひらがな1文字(1モーラ)の整列であり、数字の逆唱は、短期記憶である数字の順唱と合計されて点数化されてしまい、純粋ではない、一部の言語性ワーキングメモリが測定されているにすぎません。本当の学力に影響する言語性ワーキングメモリを測るのなら、単音ではなく、2モーラ以上の文字列であるべきです(不正確な言語性ワーキングメモリ測定)し、順唱は、検討内容から省いて、数唱は逆唱のみを検討に入れるべきです。まして、視覚性ワーキングメモリは全く無視されています。
※)WISC4の算数課題は、話を聞いて計算をさせるという方法で言語性ワーキングメモリを測定する課題として設定されていますが、上頭頂小葉の障害による一桁加減算の速度遅延を伴う算数障害の場合は、計算処理だけで重労働となるため、真の言語性ワーキングメモリよりも悪く点数がでます。
それでも、WISC4からある程度視覚性短期記憶力と視覚性ワーキングメモリーを推定する事は可能ではあります。
知覚推理(PRI)に含まれる「絵の概念・行列推理」は非言語性流動性推理であるため、やや視覚性ワーキングメモリに近く、処理速度(PSI)「積み木模様・絵の抹消」は、視覚的処理能力であるため、視覚性短期記憶力に近い存在ですが、絵の概念や行列推理は、自閉症のこだわりの影響をうけますし、積木模様や絵の抹消は発達性協調運動障害の影響を受けるため、各々を分離して検証する事は出来ず、あくまで推定できる程度です。
授業態度とワーキングメモリー
広島大学教育学部 湯澤教授の調査で、授業態度とワーキングメモリーに以下のような相関が認められています。この項目に当てはまる事が多く、かつ国語や算数の成績低下が著しい場合は、一度検査を受けてみても良いかもしれません。
●言語性短期記憶の問題
- 教師の指示をすぐに忘れる
- 国語の時間,読みのミスが多い
- 算数の時間,九九がなかなか覚えられない
- 外国語活動のときなど,外国語の耳慣れない言葉を真似して繰り返すことが苦手
言語性ワーキングメモリの問題
- 話し合いのある活動になかなか入れずまた話についていけない
- 作文や日記を書くのが苦手
- 国語の時間,読解問題につまずく
- 算数の時間,文章題につまずく
視空間性短期記憶の問題
- 黒板の文字をノートに書き写すのが遅い
- アナログ時計を読むのに時間がかかる
- 算数の時間,三角形や四角形の性質について理解しにくい
- 図工の時間,絵や模様などを描き写すのが苦手
視空間性ワーキングメモリの問題
- 体育の時間,ラジオ体操やダンス等の一連の動作を,覚えるのが苦手
- 理科の時間,複数の実験器具を操作しながら実験を行うのが苦手
- 算数の時間,図形の展開図が理解しにくい
- 生活科の時間,地図を使って学校探検や商店街調べを行うことが難しい
まとめ
教育とは、無知な子供に、知識を植え付ける事だとすれば、それは、すでにある知識(結晶性知能)など不要で、その子供の学ぶ力(ワーキングメモリ)こそが鍵となる。
こういった事から、生馬医院では、軽度発達障害関連で学力の問題や物忘れの診断と支援を行う場合、単なる発達IQテストより、2種類づつある短期記憶・ワーキングメモリのそれぞれの検査がとても重要と考えています。
脈絡なく長々と書いてしまいました。
本日のブログ内容を理解できるかたは、言語性ワーキングメモリーの多い人かもしれません。
まだまだ言いたいことは多いのですが、長くなりすぎるので、今回はこの程度にしておきます。
また書きたい事
- 前部帯状回と注意・感情の制御
- ワーキングメモリから考えたADHD
- なぜADHDの中にとんでもなく賢い人が存在するのか?
- なぜ多動は治って、不注意は残るのか?
- なぜ成人発症のADHDに小児期の病歴がない人が存在するのか
- 自閉症のワーキングメモリー
- 自閉症が陥りやすいワーキングメモリー障害
リンク
- 発達障がい児のためのサポートツール・データベース
- 読める!書ける! - 京都府教育委員会
- LD等通級指導教室の『運営』&『活用』ガイドの構築(1年次)その1
- LD等通級指導教室の『運営』&『活用』ガイドの構築(1年次)その2
- 読字・書字のつまずき把握と指導・評価”実践事例集
- 発達知能検査(WISC4検査)の開始について
コメント
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ワーキングメモリについて
おはようございます。はじめまして。たかしです。私は42歳ですがワーキングメモリの低下と思われるミスが会社で連発して、職場での信頼がかなりなくなってしまったのを機ににネットを通じてですが、脳科学や心理学を通じてワーキングメモリについて学んで実践していこうと思ってます。
先生のプログでワーキングメモリの記事を見て興味持ちました。また書きたいことの内容もとても興味があります。もう出されてるのでしょうか?
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Re: ワーキングメモリについて
>>1
たかしさん。ご意見ありがとうございます。
また書きたい内容、実はまだ文献的な裏付けが完全に取れていない部分を含んでおり、著者の経験からの推測の部分が多く、書くのを躊躇してます。もう少し固まってから書こうと思っていますので、しばらくは、自閉症特集で参りたいと思いますww
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成人のワーキングメモリーの訓練
先生こんにちは。我が家の息子は21歳で生まれつき言葉の語彙が伸びにくく、この間発達検査でワーキングメモリーが弱い。と言わら、小4の時から引きこもってます。
ワーキングメモリーの訓練を成人からできるとこがありますか。家は大阪泉州地区です。
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Re: 成人のワーキングメモリーの訓練
>>4
かんち さんこんばんわ
成人のワーキングメモリーをトレーニングしてくれる施設については、大々的に宣伝しているところは、この辺りではないと思います。
『発達検査でワーキングメモリーが弱い。と言わら』という事で、おそらく、WAIS3 のWMIの事だと思うので、それであれば、言語性WMの事だと思います。
本文でもご紹介しているように、ワーキングメモリーとは、『何かを覚えておきながら、違う考え事をしても、覚えておいた内容を忘れない能力のこと。』です。
言語性WMとは、言葉を覚えておきながら、何か違う事を考えても覚えておいた言葉を忘れない能力のことです。
例えば、本を読むにしても先に読んだ内容を理解しながら、次の文を読んでいく事に使ったりします。
さて、ある脳の部分が弱いのなら、そこを訓練するという事は、その部分の脳を使うという事です。
よって、お子さんに必要なリハビリは、『言葉を覚えておきながら、何か違う事を考える』という事を毎日行う事がトレーニングになりますし、それは、週に1回やったところで伸びませんので、毎日家庭で行う必要があります。つまり、誰かにやってもらうのではなく、自分で毎日する事が必要です。
こういったWMを使う遊びとしては、クロスワードパズルや数読、Nバック課題(https://itunes.apple.com/jp/app/n%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF/id591320567?mt=8&ign-mpt=uo%3D10)など、いろいろゲーム仕立てででていますので、やってみたらどうでしょうか。ただし、劇的な改善効果は望まないでください。Alloweyらの実施しているWMリハビリゲームである、”Jungle memory”( http://junglememory.com/)でも、効果としては、学校のテストの点数が5点ほど上がる程度でした。
伸ばすコツは
1:70%程度の確率で成功して、本人がたのしいと思える課題
2:成功率が上がってきたら、さらに難易度を上げて、成功確率70%程度の課題を設定する。
3:毎日実施する事
4:数分実施して、やりすぎない事
5:本人がワーキングメモリーを良くしたいと考えている事
の5つです。
リハビリは何でもそうですが、たとえば、脳卒中の人のリハビリ学で分かっている事は、
1:本人が歩きたいと思っていない人に歩くトレーニングをしても改善しない
2:毎日やらないと改善しない
3:やりすぎて嫌いになったら改善しない
のです。
またそれ以外で増やす方法として、ADHDの診断が可能であれば、投薬によってワーキングメモリーは1.5~2倍くらいまで増えますので、精神科などで、ADHDの診断が可能かどうか伺うというのも手です。
なお、ワーキングメモリーが低いのと、『小4の時から引きこもっています』のとは、別の問題ですので、ワーキングメモリーを改善させれば、変化するというものではないと考えるべきです。それも含め発達障害に詳しい精神科に相談するのが良いと思われます。
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WAIS-IIIの結果と実際の症状について
初めまして。
今年、発達障害を疑い受診したところADHDの診断が下り、服薬をして生活が大分改善されたのですが、テストの結果と実際の症状についてお伺いしたいことがあります。下記はテスト結果です。
言語性IQ→121
動作性IQ→109
全検査IQ→118
言語理解→116
・単語 13
・類似 14
・知識 12
作動記憶→100
・算数 9
・数唱 16
・語音 5
※ 理解 16
知覚統合→106
・完成 11
・積木 12
・行列 10
処理速度→110
・符号 12
・記号 12
※配列 12
※組合 12
私の実際の症状は
・マルチタスクが弱い
・数字が苦手
・方向音痴
・顔が覚え辛い
等が主なのですが、知覚統合の結果から考えると、なぜ方向音痴になってしまうのか分かりません。
顔が覚え辛いのは作動記憶が影響しているのでしょうか?
あと、算数は「9」とはいえ、かなり数字が苦手なのは何故なのか。短期記憶が弱いのが影響しているのか、もしくは学習障害でしょうか、だとしたら、短期記憶による数字の弱さと学習障害の違いは何なのでしょうか。
長々と申し訳ありません。
お手すきの際にお願い致します。
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Re: WAIS-IIIの結果と実際の症状について
>>6
どなさん、こんにちは。
際限がなくなるので、個別案件の相談は、今後はご遠慮ください。
本件については、本来、検査を受けた施設の人から説明を受けるべきです。
ブログでも、講演でもよく言ってるのですが、発達検査で発達障害や学習障害の診断はできません。ココ、大事です。
情報が足りなさすぎるのです。
そもそも、診断には、発達検査は不要で、ほとんどは詳細な問診によって、時に他の認知検査、他の運動検査の方が重要です。
よって、発達検査をもって、病名と関連づける癖はおやめください。
>知覚統合の結果から考えると、なぜ方向音痴になってしまうのか分かりません。
>顔が覚え辛いのは作動記憶が影響しているのでしょうか?
方向音痴の原因は様々です。多いのは、絵画立体認識~記憶の悪さ、ボディイメージの悪さ、があります。多くは運動音痴の人に合併し、後頭側頭腹内側領域が関係するものは、積木模様に現れやすいですが、あくまで単純図形ですので、地図認識、場所認識にかかわる現在地認知と比べ簡単すぎるテストにすぎませんし、顔認知が悪いのは、これ以外に、もっと上位の紡錘状回顔領域などの不良によりおこるもので、この検査には現れません。
絵画記憶や、movement ABC2、運動診察などを見れば、何らかの異常として検出されることが多いですが、それでも紡錘状回顔領域だけの異常がおこれば、顔以外の絵画記憶は正常となります。
>算数は「9」とはいえ、かなり数字が苦手なのは何故なのか。短期記憶が弱いのが影響しているのか、もしくは学習障害でしょうか、だとしたら、短期記憶による数字の弱さと学習障害の違いは何なのでしょうか。
学習障害は、単なる苦手とは違いまして、かなり悪い人を意味します。WAISの算数は、算数能力の一部にすぎません。また、学習障害の診断は小学校6年生までしかできませんので、成人の学習障害の検査診断は不可能です。
読者の皆様にわかっておいてほしいのは、学習障害の検査診断を希望するのであれば、小学校の間に、学習障害に詳しい医師のいる病院で検査を受けてください。あとで検査は出来ません。問診による診断は可能ですが….
また、診断までの待ち時間が長いですから、受験直前に診断を希望されても、無理があります。
あなたの場合、語音整列が-1.7SDですので、言語性WMにかかわる部分が十分に悪いです。(数唱と語の記憶系はやや別経路であり、現状で行われている、合算して求める一般的な作動記憶が100というのはあなたの言語性作動記憶が正常である事を意味しません)
つまり、左音韻ループ、左前部帯状回、左前頭前野の処理速度のうち、いずれか、またはどちらも悪い可能性がありまして、そんな人は繰り上がりが多い算数は苦手です。(繰り上がりの無いように調整した暗算なら速くできますし、そろばんに置き換えて、視覚性WMを使って解く暗算なら早くできますが。)また、マルチタスクは無理な事が多いです。これも視覚性に置き換える事ができれば、うまくできる事もありますが....。
よって、あなたの主訴と検査結果は矛盾しません。
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はじめまして
自己判断でADHDではないかと思っている成人です。
自分でネット検索をして色々調べています。
こちらのブログが今まで見た中で一番分かりやすく面白かったのでコメントさせて頂きました。
また書きたいことの2-i、2-iiにとても興味がありますので是非ブログに書いて頂きたいです。
宜しくお願いします。
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すごく面白く、ためになりました!
ワーキングメモリーで検索して、ヒットしました。
ブログ遡って読ませていただきます!
なるほど、です。
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ワーキングメモリー
生馬先生 昨日も書きましたが、自宅でパソコン画面で拝見し、なるほどと思いました。WISCⅣの数唱は聴覚記名、語音整列も3の3系列まで順唱にしますから、どんな間違いをするかも要チェックなのですね。WMという点では算数の方が同時に処理する能力が見られるので、こちらも余力があれば(算数嫌いでなければ)とってみてあげたいと考えました。言語理解が高く、WMが低く出るお子さんが多々おります。言語課題の場合、周辺情報で答えても概ね正解であればOKなのでWMほどの厳密さがないという点でこの差が出ると考えるのか、WMの上位に言語があるわけではないと考え全く別の能力を測っていると考えたほうが良いのか?と悩むこともあります。
今回の先生のレクチャーでWMには投薬が効果あり、とありました。ADHD+読み書きの困難さがありWM(WISCⅣ)がある児童が投薬とビジョントレーニング(手術も検討しているほどの斜視)を開始しました。効果を期待したいです!次は自閉症早期療育を読破します!新しいブログも楽しみにしております。
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はじめまして
はじめまして。
最近、小学2年生の息子が注意欠如・多動症の診断を受けました。
授業中に(特に国語など)教科書の端を破いたり、筆箱を明け閉めをしていたり思い付いた事を挙手せずに喋ったりなどの行動があります。
漢字も苦手で間違えてが多いです。
WISC-IV検査結果は、全検査99点、言語理解103点、知覚推理104点、ワーキングメモリー79点、処理速度104点でした。
今、ストラテラを朝10mg夜25mg投薬中で今の量になってから3週間がたちます。
診察しないと分からないとは思いますが、注意欠如・多動症の子は投薬のみで療育などしない子もいるのでしょうか?
主治医の先生に聞いたのですが、しなくていいと一言言われただけで理由は言ってくれず、こちらも聞けずにいます。
親としては、本人にも自分の苦手な事を理解して欲しいのですが注意欠如・多動症は、療育には向かないでしょうか?
よろしくお願いします。
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Re: はじめまして
>>13
個別の案件にはお答えしない事を前提に、一般的なADHDと療育のお話をしますと、
まず、保険で行われる療育は存在しません。よって、自費での療育の話をします。(著者的には、日本の保険で認められる範囲の自閉症の療育もほぼ無効と考えている派です。)
まず、論文で不注意成分であるワーキングメモリー障害の改善に微々たるものではあるけれど、上述のjungle memoryで改善が報告されていますが、これは、ご両親が簡単な英語が読めれば、クレジットカードを使って、ご家庭でも出来ます。
外国で行われている『ゲームによって集中力を上げる』とうたうものが、日本進出を狙って、今開発~市場調査を実施していますが、個人的には、ゲームによるものは般化が乏しく、一般生活ではあまり向上は見込めないと考えています。
多動衝動成分は加齢とともに改善する事が多いので、それまで環境調整(ペアレントトレーニングや学校側で行う環境調整daily report card( http://kurume-stp.org/ ) )などを行うほうが、よっぽど行動を改善させます。
ただ、こればかりは診察しないとわかりませんが、合併しやすい発達性協調運動障害とそれに起因するタイプの読字障害や書字障害などは、それに適応した療育やクラブ活動は、ある程度有効と推定されており、現在日本DCD学会がエビデンスを作るべく奮闘中です。全般性算数障害は無効な印象です。
勉強の時に集中しないのは、ADHDが原因だけでなく、学習障害があるために集中から逃げている場合もあるのです。その場合、ADHDを改善させても、勉強の集中力は思うように上がらないというパターンの方もいらっしゃいます。
-
セカンドオピニオン
言語性IQ→110
動作性IQ→128
全検査IQ→119
上の検査結果を貼ってらっしゃる方とそんなに変わらないのに発達障害ではないと診断されました。
作動記憶 109 処理速度 118 のためらしいですが
AD ADHD のチェックでは症状が強いと出ていました。
一番低い算数9 高い絵画配列17と開きありグラフに波があります。
・気を付けてるつもりなのに仕事でミスが出る
・片付けが全く出来ない
・優先順位、多くのものから選べない、段取りが出来ない
・長期予測が立てられない
・見通しが甘く間に合わない
・封筒に宛先を書く時、気を付けても一回は間違える
・近所で会うと管理人さんだとわかるが駅で私服の時だと管理人さんに似ているが本人だと確信できない
・方向音痴ではない。初めて行く場所でもグーグルマップで景色を見てから行くと以前来たかのように迷わない
・忘れ物はないがやろうとしたことをいつの間にか忘れる
買った参考書を数か月たっても1ページも開かないが、やらないととは思っている
前職で、1 理解できてないのにわかりましたと言わないように、
理解力が足りない
2 いつまでたっても仕事を覚えようとしない
と指摘されました。1は知覚統合121で耳で聞くより視覚の方が頭に入ってくるせいでしょうか。1回わかったと返事してあとで考えようとします。 2はやろうと思ってノートをもって毎週カフェには行っていますが結局やらずに何か月も先延ばしにします。
受験勉強、資格試験などもそうでした。
かなり異常な気がしますがこれでも発達障害ではないのでしょうか?個別審査はしないということで、ほかの病院で診断してもらった方がいいのでしょうか?
あと転職中です。どのような職業だと力を発揮できるのでしょうか?
-
つけたし
さきほどの付け足しです。
興味のないものは取り掛かれず先送りしますが興味のあることだと何時間でも熱中できます。
・興味のあることだと気が付いたらどんどん情報を集めて人に説明できるくらいになります。
・何かに不自由な時にすぐ〇〇したらいいのに!と思います。たとえば親が老眼で小さいパックのしょうゆの切り口がわからないという。見たらどこからでも切れますと書かれているがその字が小さい。
私だったらどこからも切れるようにしたうえで太く赤いマークをつける。地が読める人はどこからでも切れるし見えない人もマークがあればそこから切るのかな等です。
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Re: つけたし
>>15,16
何度もここに書いてると思いますが、
WISC, WAIS, K-ABC, DN-CASなどのいわゆる知能検査で発達障害の否定も肯定もできません。
否定に使ってはいけません。
肯定につかってもいけません。
精神発達遅滞の診断や、認知パターンを知って教育方法を推定するために使用するものです。
-
ワーキングメモリの訓練について
はじめまして、4歳8か月の息子をもつ母親です。息子はおそらく自閉症スペクトラムだと思います。京都在住で、児童福祉センターの発達診断外来の受診を待っている状態です。1年半後待ち状態です。現在、療育に週1回通っています。
先生のお話のようにワーキングメモリの重要性を感じています。
指示が入りにくく、短期記憶が苦手です。ワーキングメモリを鍛える訓練、本や数字を活用してやろうとしてもなかなかできません。自閉症スペクトラムの傾向があるので興味のないことは進みません。
3歳児ができるようなワーキングメモリを訓練する方法はありませんか。
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処理速度の上げ方
処理速度がかなり低いです。どうにか訓練する方法はないでしょうか。また、逆から数字を唱える際、同じ個数を覚えていても、取り出すのが早い人と遅い人がいることに気づきました。
これは何が違うのでしょうか?
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Re: ワーキングメモリの訓練について
>>18
>1年半後待ち状態です。
うわぁ、京都も大変ですね。その点和歌山は田舎ですから、当院周辺はだいたい6か月待ちが多いです。当院は5か月待ちくらいです。大阪も待ちが長いので、わざわざ当院まで通う方もいらっしゃいます。
でも療育にすでに通えているという事で、安心しました。
>指示が入りにくく、短期記憶が苦手です。
正常4歳児のワーキングメモリーはほぼ無に近いです。ですから、指示が入りにくい、短期記憶が苦手というのは、そちらに注意がむけられていないだけではないでしょうか?
>自閉症スペクトラムの傾向があるので興味のないことは進みません
これも、自閉症というよりは、ADHDの影響で注意が向けられないのだと思います。
ADHDの確定診断は小学校入学後になってしまいますが、そういった要素がだいたい皆さん混入しているので、面白い遊び仕立てで、指示を覚えさせるのは、どちらかというと言葉遊びに近いものが良いと思います。
>3歳児ができるようなワーキングメモリを訓練する方法はありませんか。
ありますよ、皆さんよくやってます。何かを考えながら実行する遊びであれば良いんです。
言語性WM→言葉あそび系、しりとり、猛獣狩りに行こうよ
視覚性WM→手真似、手遊び、作り方を見て覚えて積木造り
お子さんのレベルに合わせて、(8割くらいの確率で成功できる課題遊びを考えて)一緒に共有できる遊びを。
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Re: 処理速度の上げ方
>>19
処理速度は符号、記号探し、絵の抹消の総和から算出されます。
使用する能力は、眼の動き、手の動き、視知覚、視覚性WMです。
よって、卓球やバトミントン、テニス、野球等の小さい動体を素早く見て、指先のタッチで打ち返すなどのスポーツを人から教えてもらいながら、人の動きを真似るトレーニングを行いつつ、ボディーイメージの成立から記号などのパーツ認識を向上させ、神経衰弱で短期記憶を上げるのがよろしいかと思います。
>取り出すのが早い人と遅い人
音韻ループから取り出す人と一旦視空間スケッチパッドに書いてから逆唱する人の違いかもしれないと考えています。もしそうなら、音韻ループをあまり使ってないので、言語性WMとして算出すべきでないんですよね。
読字障害が無い場合、WISCで行われているような簡単なListening Span Test の結果とReading Span Testの成績が解離する場合、こういった理由を考えます。
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ワーキングメモリについて
- 発達知能検査(WISC4検査)の開始について