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日本人保育園児における対人関係発達調査その2

日本人保育園児における対人関係発達調査その2

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前回に続きまして、保育園児の対人関係発達過程についての取材経過のお話です。

調査対象

聴取に応じて頂いたのは、大阪府岸和田市の光陽保育園とその姉妹園新桧尾台保育園の保育士約20名の方々です。この保育園は生後3か月~7歳までの子供の保育を行っています。全園児数は270名の保育園です。今年で創立40周年を迎えます。
約2時間半かけて調査にご協力いただきました。
本当にありがとうございました。

調査内容

自閉症/アスペルガー症候群 RDI「対人関係発達指導法」
―対人関係のパズルを解く発達支援プログラム 単行本 – 2006/5
スティーブン・E. ガットステイン (著), 小野 次朗 (監修), Steven E. Gutstein (原著), & 3 その他

とその原著

Autism Aspergers: Solving the Relationship Puzzle--A New Developmental Program that Opens the Door to Lifelong Social and Emotional Growth
by Steven E. Gutstein

に記されているRDA(Relationship Development Assessment)の各発達段階に達する日本人園児の年齢を調査する。

調査方法

 一般的に発達段階の調査に使用されるIQテストなどでは、全体の標準偏差の2倍以上の遅れ(-2SD以上)がある場合に、異常であると診断します。これは、IQテストでは75以下、偏差値では30以下、パーセントでは、全体の2.3%に相当します。

 よって、調査の方法は、RDAにおけるLevel 1~6までの、それぞれの発達項目について、全体の97.7(約98%)が到達していると思われる年齢について、各担当年齢に保育士さんに教えていただきました。この98%と言うのは、当該保育士の先生方の感覚での判断ですので、厳密な科学的根拠はありません。よって、今回の調査の医学的厳密さはあまり求めない事としてください。それでも、実際に日本人のRDIに記されている社会性の発達過程が、調査されていませんので、大変貴重な体験でございました。

本日は6段階あるうちのLevel 3までを記載します。

 このLevel3までの段階は、3歳までに自閉症と診断される子供(多くは、M-CHATというスクリーニングに引っかかるタイプ)のほとんどが収まる範囲で、Level4以上の発達を獲得している場合、小学校入学までに自閉症の存在に気づかれない場合があります。(高機能自閉症はだいたいLevel4以上の人が多いです。)


RDA
Relationship Development Assessment

Level1(同調のはじまり:生後2~6カ月)

 赤ちゃんが最初に社会性を獲得するための練習対象は、母親です。母親とのちょっとした関係の持ち方を詳しく観察し、Gutstein博士は、この初期段階を4種類に分類しています。

情動調律 [Emotional Attunement]

大人と顔を合わせて感情を共有する行動。
原著では2~3か月でみられると書かれています。
その主な項目について、日本の保育園児はどうか尋ねてみました。

眼と眼を合わせる

これは、当該保育園の対象年齢外ですので、小児科医としての経験から、2か月くらいまでには、見られていると判断して良いと思います。

母親などが不安や喜びを感じると児が即座に同じ反応をする。

つまり、母親の表情や声の質によって、喜んだり、泣きそうになったりするという感情の同調を意味します。だいたい4か月くらいには見られているようです。

社会的な参照[Social Refferencing]

承認、安全、安心感を得るために、大人の顔に現れた反応を観察する行為。
原著では4か月の終わりまでには見られると書かれていましたが、当該保育園児では(98%の園児にみとめられる年齢は?と言われれば、)6カ月くらいだという事にまとまりました。以下の項目はすべて6カ月までには見られるそうです。

  1. 不安な状況に陥った時、母親などのパートナーの表情を参照し、それが肯定的で落ち着いた、にこやかな物であれば、赤ちゃんの不安は解消されるが、そうでない場合は、不安が増強される。
  2. 大人の視線、または、なだめる言葉がけで、慰められる。
  3. 自分の振る舞いを大人がどうとらえているか、その反応をチェックしてくる。

興奮の共有[Excitement Sharing]

興奮を楽しむとともに、母親が導入する新しい刺激を楽しむ。
原著では5か月までとされていましたが、当該園児においては、下記の状況でした。

  1. 母親などのパートナーが笑うと、つられて笑う。(3か月)
  2. 母親などのパートナーを喜ばせるための活動を意図的に行う。(4か月)
  3. 特定の活動にこだわらずに、人をあそびに誘う(5か月)
  4. 母親などのパートナーと関わって嬉しさや喜びを共有する事の方が、一人遊びより楽しそうにしている。(6か月)
  5. 新しい物、新しい刺激を求める。母親などのパートナーが新しい遊びを導入したとき、意気込んで参加する。(7か月)
  6. 自分が楽しんでいる活動を続けたい時に積極的で誘うようなやり方で、その事をはっきりと知らせる(8か月)

単純なゲーム[Simple Games]

親と子で単純な繰り返しをしながら、クライマックスでもりあがるゲームの形をとるようになり、最終的にはそれを先回りして考えられるようになってくる。
原著では6カ月頃から始まるとされています。が、当該保育園児では4か月までにはそのような徴候がみられているという事でした。

「いないない、ばあ」などの遊びの中で、ばあ と言う前にそれを予想して笑い出す。(4か月)

Level2(ダンスの練習:6ヵ月から12か月)

 母親と協調した行動がとれるようになってくる。母親の行動を一瞬毎に参照して、自分の動作のタイミングを計って初歩的な協調動作ができるようになってくる。これが、生後6か月~12か月までに始まる。と書かれています。

経験共有の枠組み[Frameworks]

明らかな順序と構造のある、儀式的な遊びで母親と赤ちゃんが遊び始める。
これは、おもに、手遊びを意味します。トントントントンアンパンマンなどの母親の手の動きに協調して自分も動かしていく。そのタイミングを取る訓練が始まっています。

『おつむ てんてん(8か月)』、『かいぐり(ちょちちょち あわわ)トントントントンあんぱんまん(コブ爺さんの唱)(1歳周辺)』、『げんこつ山のたぬきさん、(2歳周辺)』などの、はっきりとした順序と構造のある、単純で、儀式的なゲーム(手遊び)で遊び始める

遊び仲間と同調し続ける。他に何か面白い活動があったとしても、母などの社会的パートナーを無視しない。(1歳)

変化の楽しさ[Variations add the Spice]

 見慣れたいつも通りの順序の遊びに、親が少し変化を加えると、とても喜んでくれるようになる。逆に言うと、いつも通りの遊び方では飽きてくるという事だと理解しました。
 このレベルのつまづきのある自閉症児は、いつも通りの方法に執着する傾向が強く、変化を付けると、『違うよ』といって、いつも通りの方法に戻そうとしてきます。

見慣れて、ワンパターン化した遊びに親が新しい要素を取り入れると、笑い出す。(10か月)

母親が紹介した新しいゲームや活動のルールと役割を覚えることを楽しむ。(1歳)

ダンスのレッスン[Dancing Lessons](原著では9か月頃から)

 相手の番の後に、自分の番が回ってきて、交互に協調しながら楽しむダンスのような行為がわかるようになってくる。

役割を果たす行動にはっきりした順序がある場合(ボールなどの受け渡し、『私の番で、あなたの番』、『あげて、もらう』、『引っ張って、押す』)や、『よーい、ドン』などのタイミングを示す合図がある場合に、自分の動きや行動を調整できる。(10か月)

合わせた動き[Moving Together](原著では1歳頃から)

上記ダンスのレッスンが、遊びから逸脱して日常の様々な場面で協調作業ができるようになってくる。

親に言われなくても、促されなくても『こんにちは』や、『バイバイ』が出来る。(1歳)

遊び方についての自分の理解が、母親などのパートナーと共有されていることを確かめる(1歳半)

親の提示した新しい(簡単な)遊びのパターンを見抜いて、次の行動を予測してくる(2歳)

遮蔽物に隠れて一方から顔を出して親が呼び寄せると、子供はそちらに来るが、その時、反対側から声をかける。
反対側に来たとき、また親が隠れて、また反対側から声をかける。
これを繰り返すと、次第にパターンを認識し、反対側から親が声をかけてくる事を予測して、反対側で子供が待ちかまえるようになる。

修正行動[Repair Actions](最終段階)

今までの集大成です。一瞬毎に母親の行動を参照し、その中のパターンを見抜き、そのパターンから崩れても、それを修正してきます。
当該保育園児は1歳までにはこれらができているそうです。

協調遊びの調和が崩れた時、それを自ら修正してくる。(1歳)

ボールの受け渡しで、ボールを落としてしまったりした場合、自ら拾って、親に渡して遊びを続けようとする。(1歳)

母親と綱引きをして遊んでいる場合、間違って、紐を引っ張りすぎて、母親の手から紐が外れた場合、(子供の目線は紐と母親の目を交互に往復させた後、)綱引きの続きをしようと思って、(母親の顔をチラッと見ながら、何かを期待するような表情で)紐を母親に差し出す。(1歳)

Level 3 (即興と共同創造:原著では1歳~1歳半)

今までの学習の成果として、今度は自分たちが、遊びの中に変化を積極的に取り入れ、また他者の取り入れた変化に合わせて遊べるように変わってきます。

共同変化[Co-variation](原著では1歳3か月まで)

遊びの中で、協調できているか気を付けながら即興で変化を加えていく事が出来るようになってきます。

かくれんぼ遊びにみられる即興変化(1歳半)

ありきたりの簡単な物陰にかくれるようなかくれんぼをしている最中に、母親が変化を付け、子供に毛布を渡して隠れる事を教えると、子供はその毛布をかぶって隠れる。母親はわざと、わからないフリをして、子供を探すと、子供は笑い声をあげて母親を誘うようにしてまた隠れる。毛布を母親がはがすまでずっと隠れている。

自分と関わりあっているパートナーを混乱させたり嫌がらせたりする様な行為は、すぐにやめたり、変えたりする。(1歳半)

活動を変える前に、社会的パートナーがそれに同意する事を確かめる。(1歳半)

母親などのパートナーと自分の速度を調節して肩を並べて歩くようにする

当該保育園では、子供同志で手をつないで歩く行為とみなしました。(2歳)

流動的な移行[Fluid Transitions]

今行っている一つの遊びから、よく似た次の遊びに、ゆっくり変化しても混乱せずについていけるという能力です。子供たちは一つの遊びを行っていても知らず知らずのうちに遊び方が少しずつ変化していきます。それに合わせて自分もついていけるかという事です。
 いま行っている遊び方法に固執せず、かかわっている友達の遊びが変化しても、それに合わせていけるという能力です。

『走る→登る→ジャンプ遊び』 や、 『ビーズクッションの山づくり→クッションに倒れこみ→クッションを投げ合う』、『ブロック組立→ブロック投げる→叩いて太鼓として遊ぶ』(2歳)

即興[Improvisation]

母親などと、共同して協調を維持しながらも、一緒になってルールと役割が変化し続けるような活動を楽しむ。

決まった遊び方に則るのではなく、いろんな遊びの一部一部を取り出して組み合わせて、即興で遊びを展開していく事に面白さを見出していく。(2歳)

つまり、ある遊びとある遊びの一部ずつを取り出して、合体させて、違った遊びを自分たちで作って遊びあうという事。

お互いにすれ違いが起きても修正しようとしてくる。(女児2歳、男児3.5歳)

自分のしたい事が、他の人のしたい事と違う時、妥協しようとする。衝突を避け、和解するための行動をとる。

これに関しては原著より高年齢となってしまいましたが、この妥協するという行動はどちらかというと、Level5における発達項目(違いの楽しさ)とかぶってくるのですが、博士の観察した衝突回避行動はもう少し、わずかな行動で、それほどの大きな妥協を意味していないのかもしれませんが、原著でも、訳本でもややこの部分はうまく子供のふるまい方の違いが理解できませんでした。

共同創造[Co-creations]

独創的な自分たちだけがわかる遊びを展開していく。

自分たちだけの、独特な遊びを創る事が出来る。(2歳)

パートナーが造る新しい遊びに協力して参加できる。(2歳)

関連リンク

  • 日本人保育園児における対人関係発達調査その1
  • 日本人保育園児における対人関係発達調査その2
  • 日本人保育園児における対人関係発達調査その3
  • こども発達センターつばめ

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