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日本人保育園児における対人関係発達調査その3

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本日は、前回からの続き、RDA のLevel 4~6について書きます。
Level5の人は、小学校高学年になるまでは、あまり問題が起きてきません。
同級生に社会性の発達した友達がいる場合を除いて、高学年を越えてくる頃から徐々に友達が減って来ることが多いようです。

目次

Level4(外部世界の共有:原著では1歳半~2.5才)

共同注意(Joint attention)をする事によって自分と相手の独特な感性を共有できる様になってくる段階。
共同注意とは、「2人以上のパートナーが外界の物事を一緒に参照する中で、同じ情緒的反応を分かち合う」と言う事である。

知覚共有[Perception Shareing](原著では1歳半まで)

外の刺激を他の人と一緒に知覚し、その後、視覚と言語による情緒の共有を楽しむ。(当院調査で2歳)

 親の視線を観察し、親が自分の見つけたものに気付くまで『見て!見て!』と叫ぶ。親が自分の意図した方向に注意を向けていることを確認すると、子供はすぐに視線を移動させ、今度は感情を共有するために親の顔を参照する。(親と二人で楽しみを共有できるように演出できた自分の能力を感じてうれしく満足する。)

視点取得[Perspective Taking] (原著では1歳半まで)

場所が違えば同じものを見ていても同じように見えていないかもしれないと気付き始める。(当院調査で2.5歳)

 2歳頃になると、自分からハッキリ見えていても、何か視界を遮るものがあれば、相手にはそれが見えないかもしれないという事がわかる。
例)子どもは母親に見せたいと思う絵本のページにくると、その本を持ち上げ、母親の方に向けて、その絵が母親から見えやすいようにする。

独自の反応[Unique Reactions]

物事には複数の視点があり、同じ事柄に対しても、人はそれぞれ独自の異なった反応を示すかもしれない事がわかる。
(幼稚園児A君が、砂場で楽しく遊んでいる。小さな女の子がそばを通りかかり、砂を見て、「わあ、バッチい砂!」と言う。A君は不思議に思って答える。「バッチく無いよ。とってもいい砂だよ。どうして、バッチいって言うの?」)

  • 「僕にはそれはすごく大きくみえるけど、君にはどう見える?」(3歳)
  • このおしるこのアンコが好き→臭いからキライ、マツコが好き→デブだからキライなどの言い合いを経験して同じものでも人によって違う感じ方をする事を知る(当院調査で3歳)

 厳密には、このお互いの言い合いを通じて、人それぞれ感じ方が違うのだという事を理解しているかが重要なのですが、そこまでは保育士さんは確かめられていない場合もあるので、やや大まかな年齢と考えてください。

想像力の付加[Adding Imagination]

知覚できる物事に対して、創造的要素を加えることを面白く感じる。

帽子はひっくり返すと入れ物に使える。(当院調査で2歳)

 本来の用途と違う用途に使うという行動ができるようになります。ただし、まだ現実的に利用可能な物に対する創造性ではあります。

「あの雲は、アンパンマンのように見える。あなたにはどう見える?」(当院調査で3歳)

 これは、現実的に利用不可能なものの創造性、見立てが可能となり、その違いを確かめあう行為ですが、まだそれを共有する段階ではありません。この部分は原著より日本の子供は遅いと感じます。

Level5 内面世界の共有(原著では2歳半〜3歳)

今まではとしの違う子供や身内としかうまく遊ぶことができなかったのが、同年代とうまく遊べるように本格的に変わってきます。

アイデアの共有[Sharing Ideas]

この部分の問いかけは3つ用意しました。いわゆる見立て遊びができるかという事で3つ用意したのですが、最初の2つは1歳台で達成しているそうです。保育士さんのひいき目か?と思いましたが、実際に臨牀で自閉症児をもつ母親に問いかけても最初の問い2つは達成していることが多いようです。

誰か・何かの「ふりをする」と言うことがわかるようになる。(当院調査で1歳)

 ピョンピョンで、うさぎさんの真似などと理解しているか?ですが、保育士さん方は1歳で理解していると考えているようです。

バナナを受話器のつもりにすることが容易にできる(当院調査で1.5歳)

 『ホウキを馬のつもりにする』などもそうだと思いますが、ホウキに乗って空を飛ぶ魔女はアイデアではなく真似であると思いますので、しっかり見極める必要はあるかと思います。

自分の想像と友達の想像を組み合わせて独創的な「共同創造」を行うようになる。(当院調査で3歳)

 「友達と仮想の動物などを作って遊ぶ」などもそうですが、原著でも3歳までにはできると書かれています。実際の現場でよく見られる行動は、ブロックで、新幹線とブルドーザーを合体したような乗り物を作って遊んでいたりします。

違いの楽しさ[Exciting Differences]

自分のものの見方の正しさを確かめる為に、人が自分と同じ考えを持っているかどうか、知りたがり、その違いを楽しむ様になる。(同年代から自分の知らない事を教えてもらってそれを楽しむ。)
その違いが時には衝突の元となり得る事もわかるようになり、簡単な妥協のスキルも身につけはじめる。

〇君は□が好き、▽ちゃんは、△が好き(当院調査で3歳)

 「あれはビリー。ビリーはレゴが好き。あれはアニー。アニーはお人形が好き。」に代表されるように、人それぞれの違いを説明します。しかし、まだ見た目でわかりやすい違いに属しますが、輪郭や外見での識別ではありません。行動による違いを認識している段階ですが見た目でわかりやすい、具体的な行動の違いにすぎないです。抽象的な表現はありません。

友達が自分とは違う行動をすることを楽しめる(当院調査で3歳)

 遊びの中で、友達が思いがけない行動をしても、逆にそれを楽しむ素振りがある。

意見の違いによる衝突があっても簡単な事なら妥協出来る(当院調査で3.5歳)

 ブロックでたこ焼き屋さんを二人で作っていて、その作り方の違いでお互いに衝突があっても、たこ焼き屋さんを作りたいから、妥協して、二人で作り続ける。(これは関西人ならではですね。)

内面世界と外面世界[The Inside and Outside Worlds]

外見の行動が同じでも、それが意味するものは、状況によって違うという事を理解する。

〇〇のフリをしても、それが、本当か違うかを区別できる。(当院調査で2.5歳)

 腕を噛んで食べるようなふりをして襲う真似をしても興奮して怖がるふりをするがそれは嘘であると分かっている。原著では2歳半で、これは、日本の子供たちも同じ程度の発達でした。

嘘をつく(当院調査で2.5歳)

 人を騙す事もできる様になる。(原著では3歳)

「からかい」の意味を読み取る。(当院調査で3歳)

 「からかい」の声と表情を参照・考察して、自分に好意的な「からかい」と残酷な悪口の違いを理解することができる

心の大切さ[The Primacy of Minds]

他人の考えを読み取る事ができる。いわゆる心の理論の発達。

他の人の行動(状況)からその人の欲求や意図を読み取ることができる。(当院調査で3歳)

 「子供に手を差し出して何かを与えようとしていたところ、偶然それを手から落としてしまった時、誰に何かを渡そうとしていたのだなと理解する。」
これは、原著では5歳と書かれていますが、保育士さん方は3歳という事でした。

”わざと”と”偶然”がわかる。(当院調査で3歳)

 誰かが、自分を傷つけるようなことを「わざと」やったのか「たまたま」やってしまったのか、ということを状況から区別しはじめる。
保育士さんの話では3歳くらいからほとんどの子供はわかるようになるそうです。

Level6 他者と自己のつながり(原著では4歳以降)

他者との協調性の発達です。他人の行動から気持ちが推測できるようになると、自分のオリジナリティーに気付くようになります。まずそこに気付いた後、さらに他者と協調していこうと発達します。

他とは違う自己[Unique Selves]

他者と自分との違いに気付きながらも、繋がる方法も理解し、求める事ができる。(当院調査で4歳)

 「〇〇君とは、ここは違うね、だけど、ここは一緒だね。」

グループへの所属[Belong to Groups]

グループへの所属欲求(当院調査で3歳)

 より大きくより強力なグループのメンバーになり、その力によって周りの世界にもっと大きな影響力を持ちたい、という気持ちを強く持つようになる。

グループに認められるために行動する。(当院調査で女3歳、男4歳)

 子供は意図的に、希望するグループのメンバーたちによって認められ、賞賛されるようなやり方で、振る舞い始める。
(家族以外のグループでは、メンバーであり続ける事が保障されていない、という事を理解し、グループでい続ける為に、他の人との関係を維持する為には「努力する」事が必要であるという考えが生まれてくる。)

遊び友達と仲間[Playmates and Pals]

  • 1人で過ごしたりする時、寂しく感じ始める。(女3歳、男4歳)
  • 友達に好かれる方法を模索する。(当院調査で女4歳、男5歳)
  • 仲良しの子供に、自分の家に遊びに来て欲しいと思った時、家に来てくれた友達をもてなして、友達が楽しめる様に気をつければ、また遊びに来てもらえると分かっている。
  • どんなことをしたら友達は僕といっしょに遊んでくれるのかなあ?と考えることができる。

継続する友情[Enduring Friendships]

この段階は小学校入学後の項目なので、保育園児ではまだ達成されていませんでした。

友達にレベルがある事を知る

  • 小学校高学年の子供は、表面的な遊び相手から、仲の良い友達、そして親友まで、様々なレベルの友情があることを理解する。
  • 10代後半になると、親しい友人とは、「本当の自分を知ってくれていて、それを分かち合い、認めようとしてくれる人」と定義するようになる。

考察

今回の取材では、保育士さんの話を元に調査しているため、厳密な正確さは要求できませんが、保育士さんが感じている子供の社会性は、4歳児なら、特別な教育なしにLevel 6のほとんどを獲得していることになります。

当院に来院される不登校児や、学校でのいじめを主訴とされる方がLevel5の中途までで止まっている方が多いという事を考えると、この方々に必要な能力は、人の気持ちを推測するという能力でありますが、まずその前に、そもそも、そこに興味を持っておらず、一人でも寂しくない、かまわない、という段階で発達が止まっている方も多く、(興味の無い人に興味の無い事を指導する事となり、)なかなかうまく指導できません。さらに、その方法が、家庭や小学校で実践できるものである必要もあり、現在もその方法について模索をしている状況でございます。

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