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国産狂犬病ワクチンの不安

国産狂犬病ワクチンの不安

以前から国産狂犬病ワクチンの効果が文献報告上弱いという事で、長期、特に、3ヵ月以上途上国に渡航される方には、輸入ワクチンをお勧めしていましたが、そのワクチンの効果(抗体価の推移)についてここでまとめておきたいと思います。

 なぜ、ワクチンを接種しておくのかについて理解しておかなくてはなりません。


ウイルスが侵入した場合、速やかに抗体で中和できれば、それだけ、発症の確率を落とす事ができます。
 
しかし、受傷後、急いでワクチンを接種しても、抗体ができてくるのに1-2週間必要なわけです。

つまり、それまでは全くの無防備になります。

でも、この狂犬病免疫グロブリン(RIG)が稀少品で、手に入りにくく、途上国でなかなか投与してもらえない代物なのです。実に90%はRIGなしで加療されています。

これは、確率で考えていくしかありませんし、確率が低ければ安心できるのなら、接種しないし、不安なら接種しますし。

インドネシアにおいて、このRIGが品切れとなり、急遽シンガポール・タイへ飛行機で移動した欧米人旅行者のケース

本来、WHOが推奨している方法はこちらですが、動物に深く咬まれて流血した場合、実際は以下のシチュエーションで行われている事が多いようです。

3番以降はWHO方式に則っていません。
だいたい、5番目の対応が本当の発展途上国では当たり前のようです。でも確率からしたら交通事故以下の確率ですから、皆大丈夫というのは正しい。現地の医師にしてみても、咬まれてから発症までは数か月~1年先ですから、どうせ現地にはいないし、俺の責任じゃないし。といったところでしょう。
これで良いなら事前ワクチン接種は不要です。

じゃあ、2番目のシチュエーションで(本人はピンピンしているのに)マレーシアまで飛行機で移送された場合はどうでしょうか?有能な医師で親切だわ。とおもっても、移送費用数十万円は健康保険適応外です。(旅行保険に入っている人は大丈夫)

現地でのワクチン接種において

  1. ちゃんとしたワクチンを接種してもらえる。
  2. 温度管理が十分でないワクチンを接種される。
  3. 期限切れのワクチンを接種される
  4. 旧式マウス脳ワクチンを接種される。
  5. 中国製のワクチンと書かれた水を接種される
    まあ、これに加えて、滅菌していない器具で接種されるなんてこともあるでしょう。

アメリカでさえ、ワクチンの温度管理は不適切であったクリニックが76%も存在し、29%はワクチンの期限切れであったという報告があります。では、途上国ではどうなんでしょうか?温度管理が不適切であったり、期限切れであれば、せっかくのワクチンの効果が減弱します。


インドネシアにおける狂犬病発生件数(2010-2015)

国産ワクチンの抗体価推移


国産狂犬病ワクチンの抗体価推移

Production and Quality Control of Rabies Vaccine.
Akira Yamada, Kuniaki Sakamoto et al,The Chemo-Sero-Therapeutic Research Institute, Kumamoto 860, Japan, p83-90より

 まず、このワクチンの問題点は、接種完了まで6カ月もかかってしまうという事です。渡航ワクチン接種に来られる方は、1か月前が多く、6カ月も前から相談に来る方は希です。よって、2回接種で渡航される方が多いのですが、では、2回接種で抗体価はどう推移するのか、この文献のグラフ部分を拡大しますと、こちらになります。

国産2回接種後の抗体価推移

国産ワクチン2回接種後の抗体価推移
これを見ますと、2回接種では初回接種後3か月(2回目接種後2か月)で最低必要抗体価を維持できている方は60%であり、初回接種後4か月(2回目接種後3か月)では半分の方は、抗体が無いという事になります。

つまり、ワクチンを接種しても、接種していない人と同等になってしまいます。

これでは、わざわざ接種している意味がありません。また、外国製ワクチンとの互換性も検証されていないため、咬まれた場合は、現地で最初からやり直しになります。

これでは、いったい何のためのワクチン接種なんでしょうか?

国産3回接種後の抗体価推移

 それでは、きっちりと6カ月かけて3回接種した場合はどうなるのでしょうか。3回目接種後の抗体価推移を拡大しますとこちらになります。
国産3回目接種後の抗体価推移

 3回目接種後4か月で20%、8か月くらいで、半分の人は抗体が無い状態になっています。

一方輸入ワクチンの効果は?

輸入ワクチンには、大きく分けて3種類があります。

  1. ヒト二倍体ワクチンHDCV
    1. 効果は強いが接種回数が多くなるとアレルギー反応が出やすくなってくる。
  2. ニワトリ杯細胞精製ワクチンPCEC
    1. 現在の国産ワクチンや、当院が以前採用していたRabipureがこれにあたります。卵から作っているので卵アレルギーは接種できないですが、Rabipureは国産よりは効果が高いと考えられています。
  3. ベロ細胞由来ワクチン(VERORAB)
    1. 現在採用しているワクチンで、今の所、安全性、効果ともにダントツです。

この中で、今回、当院で採用しているVERORABの抗体価について抜き出します。

まず、抗体価の測定方法は、国産ワクチンの文献はかなり古く、中和抗体価5倍以上を有意として記載していますが、VERORABの方は幾何平均抗体価(GMT)というので記載されています。この場合、0.5IU/ml以上を有意な抗体ありと判定します。これを一つのグラフに描いてみます。

 なお、接種間隔は、国産ワクチンと同じタイミングではなく、国産ワクチンの3回目の接種より6カ月遅れての3回目接種を行った場合のスケジュールになっています。
国産とVerorabとの効果の違い

VERORABの抗体価については、
Antibody Persistence Following Preexposure Regimens of Cell-Culture Rabies Vaccines
10-Year Follow-Up and Proposal for a New Booster Policy, Alain Strady et al, JID 1998;177 (May), 1290-1295より引用

このように、国産では最終接種後40か月で有効抗体保有者は0%となるのに比べ、Verorabでは65か月後でも70%近くが抗体を保有しています。

 しかし、これは、本来のVERORABの接種方式ではありません。通常の接種スケジュールは、1か月で3回、1年後に1回で、このグラフより1回接種回数が多くなっていますので、そのように通常スケジュールで接種した場合の抗体価の比較はこちらになります。
国産とVerorabとの効果の違い2
このように国産ワクチンと比べると、ほとんどの期間、有効抗体価を維持することが出来ます。

4回目接種後10年でも有効抗体価を維持できている。

また、4回目の接種を1年後に接種した場合の抗体価持続期間は添付文書では5年ですが、この調査では10年を経ても十分な抗体価が維持できています。




国産はどうして効果が弱いのか?

 このあたりは、国産不活化ポリオワクチンの効果が弱いという所と同じ問題が出ているように思います。

 化血研はこれを問題視し、現在の国産ワクチンはそのうち製造中止し、外国産であるRabipureのライセンス生産を行う予定で、あと数年で販売の予定です。
 
 こういった重要な情報は、一般海外渡航者にはあまり知られていないようです。

 だいたい、咬まれたらどうせワクチンを接種しなきゃならないから、先にワクチンしても一緒で、咬まれた後の方が保険が効くから良いと言っているヒトもいる現状です。

 少なくともこの事を知った方は、Rabipureの国内販売までは、外国製輸入ワクチンを使用する事をお勧めします。

輸入ワクチンの初回接種回数が2回でも良くなりました


よって、この記事ではVERORABの初回投与は3回で接種完了まで4週間必要という内容でしたが、今後はたったの2回で、1週間で接種完了できる事に変わります。

 
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