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N95マスクのオゾン滅菌による再利用

N95マスクのオゾン滅菌による再利用

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 今日現在、コロナ流行はかなり収まってきているようです。こちらの文献では、そもそも、緊急事態宣言する前の3月末にすでに減少に転じていたとのことで、ひょっとすると、放っておいても日本人では収束するウイルスで、海外からどんどん入国してくるから、患者が増えただけではないかという推測まで出てきています。

 サージカルマスクはだんだん出回ってきましたし、値段も元の値段にまで下がりつつあります。

 しかしながら、N95マスクという医療機関が使う特殊マスクはまだ医療機関でも買う事が出来ておらず、医院のストックを使っている状態です。

 今回は、そんな不足しているN95マスクの滅菌再利用に関するお話です。

 関係者向けですので、一般の方は、ここから先は難しい話になります。


 厚労省はN95マスクの3回までの滅菌再利用を認めましたが、アメリカCDCが示した方法の受け売りで、滅菌方法も、過酸化水素プラズマ滅菌器という大きい病院でしかないような装置によるものだけでした。

 前回のブログで示しました、オゾンガスによる滅菌方法ですが、当然N95マスクに対しても当院は行っておりました。

当院の滅菌手法を示します。

当院のオゾンガス滅菌手法

オゾンジェネレーター

 当院が使用しているのは、オースリークリア3で、ジェネレーターの出力は600mg/hrですが、今現在売り切れてしまっています。
 しかしながら、500mg/hrのこのような機械も購入しておりまして、濃度を測ってみると、ほぼ同じ濃度が出ておりますので、他の医療機関さんも検討してみても良いかと思います。

 前回も述べましたが、これらの機械から出てくるオゾンガスは400ppm以上で、眼に直接浴びると結膜出血、直接吸い込むと肺炎を起こしますので、一般人が気軽に使えるものではないとは思います。

滅菌手法

N95マスクの生ゴム部分を出来る限り外す

 オゾン濃度測定器を持っていない場合は、オゾンを消費してしまう生ゴム部分は極力外しておく方が無難です。ゴムは後で業務用ホッチキスで止めます。なお、3Mやシゲマツ社製のゴムのように布がついているゴムは思ったほどオゾンと反応しませんので、外さなくても良いですが、生ゴムが露出しているタイプは外さないと、粉々になります。

A5チャック袋に1~2枚入れる

 2枚以上入れると、オゾンの消費が激しくなるので、1~2枚までにしてください。
 入れたら、押さえつけて、中の空気をしっかり抜いてチャックを閉めてください。

オゾンガス注入

 十分に換気されている部屋で、A5チャック袋に一杯までオゾンガスを注入したら、一旦押さえつけて入れたガスを抜いて、もう一度一杯まで注入したら、終了。そのまま放置して、翌朝再利用できます。

ガス濃度推移とマスク性能劣化の評価

 今回、慶應義塾大学 理工学部 奥田 知明教授に、マスク性能を調査していただきましたので、その結果も添えて解説します。

実験に使用したマスクの種類

A:Kenz サージカルマスクJ
 一般的なサージカルマスクです。
B:MOLDEX Airwave4600DS2
 オーストラリア製です。生ゴムが使用されており、オゾン消費強いです。
C:3M N95 1860S
 一般的なN95マスクです。こちらのゴムはオゾンとほとんど反応しませんでした。
D:シゲマツ社製 DD11-S2
 日本製N95です。こちらのゴムもオゾンとほとんど反応しませんでした。

ガス濃度測定

 GASTECのガス検知管を使用。注入したオゾンガス濃度の推移を測定し、CT値:Contact Time(オゾン濃度ppm×暴露時間min)を測定しました。
オゾンガス濃度推移
測定値詳細
最も高濃度を維持できたのは3Mで、低かったのは、MOLDEXで、主に、ゴムの成分との反応で、オゾンが消費されたものと思われました。

 なお、B3は臨牀で実際に装着使用したMOLDEXの場合の濃度で、使用すると、呼気中の有機物がマスクに付着するため、オゾンの消費速度がさらに早くなりますが、それでもCT値は1150ppm・minあるため、ウイルスの殺菌には十分すぎる濃度ではあります。オゾンによる殺菌性能のまとめはこちらを参照ください。

N95マスク劣化有無の検討

 N95マスクの主成分であるポリプロピレンやポリエチレンはオゾン耐性のある素材ですが、それでも性能劣化を調べたいという願望があったので、youtubeでマスク性能について検討して発信されている慶應義塾大学 理工学部 奥田 知明教授にお願いしたところ快く引き受けてくださいました。
 その結果をお示しします。

測定方法

 マスクフィッティングテスターというマスクの漏れを調べる機械をつかって、マスクをしっかりフィットさせたうえで、消毒前と消毒後でのマスク漏れを調べる事によって、マスクの濾過性能の劣化有無を調べてもらいました

  1. SIBATA MT-05
    1. 0.3μm以上の粒子のマスク外とマスク内の濃度比率を測定します。
  2. TSI PORTACOUNT model 8048
    1. 0.02~1μmの粒子のマスク外とマスク内の濃度比率を測定します

結果

測定結果1
 KOKENは、他の医師が蒸気で80℃30分蒸して乾かす方法で滅菌したものです。

 便宜的に漏れ率5%の赤いラインがN95マスクの性能ラインと考えます。(※うまく顔にフィットしていると仮定した場合)

 蒸気で蒸したマスクも、オゾンで滅菌された、3種類(MOLDEX, 3M, Shigematusu)ともに3回までは性能の劣化は問題ないレベルと判断されました。

 また、パンデミック時のN95マスク温存手法として、N95マスクの上からサージカルマスクをかぶる手技があるのですが、それについても検討していただきました。
二重マスク手技
 この方法では、やや5%ラインを割ったように測定されたN95マスクもサージカルマスクを上から被せるだけで、新品と同程度の濾過率になっています。(この解釈は難しいのですが、サージカルを被せた事でN95マスクの密着がよくなっただけかもしれませんが。※MOLDEXのサイズがやや大きいので、教授の顔に合っていないのかもしれません)

 いずれにせよ、当院では、この温存手技を実施しており、実務上は問題ないと考えられます。

考察

 オゾンによる滅菌は非常に簡単で、チャック袋に入れた状態で持ってきてもらえれば、注入にかかる時間は1分で済むため、忙しい臨牀において、有用です。当院でこのほか、PPEの滅菌も布団圧縮袋への注入で実施しています。

 当院のようにオゾンによる滅菌手法や、他院のように蒸気による滅菌手法など、クリニックレベルで実践可能なN95マスクの再利用方法の検討は、今後のパンデミック発生時のマスク供給不足を乗り切るための手法として、広く広めるべきであると思われました。

最後に

 マスク性能の検討を快く引き受けていただいた、慶應義塾大学 理工学部 奥田 知明教授に深く感謝いたします。

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