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狂犬病

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狂犬病(Rabie)

狂犬病が存在する地域がいかに多いか
目次

要点

まずは、お忙しい方のために要点だけ述べます。

  1. 途上国に1か月以上滞在して町を歩く人は接種すべきワクチンです。
  2. 通常国産ワクチンを3回接種します
  3. ワクチン未接種者の治療は、酷い傷の場合は、免疫グロブリンの注射を出来るだけ早くしてからワクチンを接種します。
  4. しかし、途上国の90%では免疫グロブリンは使用してくれていません
  5. 日本では免疫グロブリンの薬は認可されておらず、常備していませんので、ワクチン未接種者が、噛まれた後の処置を十分に行いたければ、帰国せず、アジアなどの場合は、シンガポールや台湾、ジャカルタなどで免疫グロブリンの初期治療を受けてから帰国するのが賢明です。

狂犬病とは

ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス (Rabies virus) を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、犬に限らずヒトを含めたすべての哺乳類が感染・発症します。

原因哺乳類としては、犬、猫などのペット類、コウモリ、アライグマ、キツネ、スカンクなどが多いですが、兎に角、ハムスターなど、家庭内飼育のペットを含めたすべての哺乳類によって感染します。アメリカでは猫の感染が犬の3.7倍もあります。狂犬病ウイルスを持った動物に、噛まれなくても、傷口や唇などの粘膜面をなめられるだけで感染します。

(明らかに狂犬病を発症している動物は、口周囲がヨダレだらけで泡まみれふらついて歩き、不安のため、凶暴性が増しています。しかし、発症前の動物からも感染しますので、注意が必要です。なお、犬と猫だけは、狂犬病発症後10日程度で死亡する事が分かっているため、おおよそ10~14日以上生存していれば、狂犬病に罹患していなかったと考える事はできます。)

2002年

狂犬病の症状や治療法については、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページに詳しく記載されています。とにかく発症してしまうとほぼ100%死亡してしまいますし、上図のごとく、ほとんどの国で発症が認められており、毎年3万5000~5万人の人がこの病気で死んでいると言うんですから、渡航者にとっては、もっとも注意すべき疾患であります。

東南アジアでは、普通に野犬が道端にゴロゴロいますし、実際死亡者のほとんどは東南アジアが占めています
死亡者数第一位はインドで、2位のパキスタン、3位の中国と比べ、10倍の死亡者数と抜きんでています。

H18年11月22日、横浜60歳男性が2か月前のフィリピン滞在中の犬に手を咬まれたために発症し死亡するという事例がありました。

狂犬病に罹患しやすい状況

  1. 動物にかまれて血が出る。
  2. 血が出ている傷口を動物に舐められる。
  3. 動物に自分の口や目を舐められて、唾液が中に入った。※最も危険
  4. 眠っていて、気が付いたら近くにコウモリが居た。
  5. 動物にかまれた他人の傷を舐めた。

症状

潜伏期間は咬傷の部位によって大きく異なる。咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは神経系を介して脳神経組織に到達し発病するがその感染の速さは日に数ミリから数十ミリと言われている。したがって顔を噛まれるよりも足先を噛まれる方が咬傷後の処置の日数を稼ぐことが可能となる。脳組織に近い傷ほど潜伏期間は短く、2週間程度。遠位部では数か月以上、2年という記録もあるが、過去の最長記録は7年である

潜伏期

潜伏期は咬傷を受けた部位、咬傷の程度、衣服の上からか素肌を咬まれたか、ただちに傷を洗浄したかどうか、その他の要因によって左右され、15 日程度~1年以上とばらつきが大きい。

患者の約60%では潜伏期が1~3ヵ月であり、1年以上の潜伏期が6~8%の患者で記録され、最長例は7年前にラオスで受けたイヌ咬傷が原因で発病した米国への移民少女である。

前駆期

風邪に似た症状(発熱や食欲不振などの非特異的症状)のほか、咬傷部位にかゆみ(掻痒感)、熱感などがみられる。知覚過敏や疼痛は神経走行を逆行性に広がり、咬傷受けた上下肢の痙攣も起こってくる。

前駆期は2~10日間続く

急性期

  • 不安感
  • 恐水症状
    (水などの液体の嚥下によって嚥下筋が痙攣し、強い痛みを感じるため、水を極端に恐れるようになる症状)
  • 恐風症
    (風の動きに過敏に反応し避けるような仕草を示す症状)
  • 興奮性
  • 麻痺
    (他の症状を認めず、麻痺のみ認める患者が20%ほど存在し、その場合はポリオと誤診されやすい。)
  • 精神錯乱
  • 腱反射、瞳孔反射の亢進
    (日光に過敏に反応するため、これを避けるようになる)

末期

2日から7日後には脳神経や全身の筋肉が麻痺を起こし、昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡する。

なお、典型的な恐水症状や脳炎症状がなく、最初から麻痺状態に移行する場合もある。その場合、ウイルス性脳炎やギラン・バレー症候群などの神経疾患との鑑別に苦慮するなど診断が困難を極める。
恐水症状は、喉が渇いていても水に恐怖を感じてしまう為、苦しむ動物や人間は多い。

狂犬病が疑わしい動物に噛まれてしまったら?(暴露後処置)

動物に咬まれる件数は、日本においては、年間6000件程度ですが、
一方、中国の場合、例えば、広州市だけで年間80000件で、増加傾向だそうです

事前のワクチン接種せずに、現地で咬まれて帰ってきた方の多くが、『手を咬まれてちょっと、流血したくらいで、大丈夫だろう、大げさな』と思って、帰国してきて、その後に詳細を知ってから、

  • 何かほかにするべきことは?とか、
  • 大丈夫でしょうか?とか、
  • これは狂犬病の症状ではないでしょうか?とか、

聞いてきますが、発症したら99%死亡しますし、早期発見してもあまり意味がありませんので、助かるために帰国後悩んでも無意味です。

咬まれたときに傷口の消毒とワクチン暴露後接種だけでなく、現地でどこまで真剣にお金と時間をかけて免疫グロブリン接種にこだわるか以外で、他にすることがありません。

帰国してきたのなら、クヨクヨせず、『私は発症しない』と開き直って生活してください。

傷跡の処置

まずは、傷口を石鹸と流水でよく洗い、イソジンンや、塩化ベンザルコニウムなどの消毒薬で、処置します。狂犬病ウイルスは非常に弱いウイルスであるため、この処置によって、感染性を大幅に減少できます。もし、この処置を怠ると、以下に示す免疫グロブリンや、ワクチンによる処置の効果が大幅に低下してしまします。

※また、動物の口内は雑菌の宝庫ですので、ペニシリンなどの抗生剤内服などによる治療はパスツレラ感染症などの細菌感染予防に重要です。狂 犬 病 ばかりに気を取られて、細菌感染で重症化するような事にならないようにしましょう。

咬まれた状況の観察

ワクチンと免疫グロブリンの投与が必要かどうかは、以前に狂犬病ワクチンの接種を受けたことがあるかどうかと、かんだ動物の種類と状態に応じて判断されます。たとえば、アメリカ国内では、次のような点が検討されます。

  1. かんだ動物はアライグマか、キツネか、スカンクか、コウモリか、野生動物か?
  2. かんだ動物は病気のように見えたか(ふらついていたか?唾液だらだらか?)
  3. かんだ動物は、挑発していないのに攻撃してきたか?
  4. 人が近づいても逃げようとしなかったか?
  5. かんだ動物の経過観察は可能か(10日以上生きているか観察できるか?)
    これらの条件が多ければ多いほど、その動物が狂犬病である可能性が高く、できる限りWHO推奨治療をしておくべき状況であるということになります。

※途上国では、犬、猫なども危険が高いですが、アメリカでのペットの狂犬病罹患率は低いです。

医療処置

次に重要なのは、狂犬病ワクチン接種者と未接種者での、噛まれてしまった場合の対処方法の違いについてです。
詳しくは狂犬病暴露後の項を参照ください。ざっくり言うと…

ワクチン接種者の暴露後対処方法
1)噛まれた傷跡の処置の後に、
2)0日と3日後に、ワクチンを接種するだけ。

ワクチン未接種者の暴露後対処方法
1)噛まれた傷跡の処置の後に、
2)受傷が酷かったり、首より上を嚙まれたり、舐められた場合は、狂犬病免疫グロブリン(RIG)を創部と筋肉に注射し、
3)狂犬病ワクチンを0, 3, 7, 14, 28日後の計5回の接種を行う。
※RIG投与は早ければ早いほど良いが、どうしても無理なら7日以内に投与してもらう。

アメリカCDCとWHOでは、ワクチン未接種者に対しては、狂犬病発症動物に深く咬まれたり、口などの粘膜や、傷口を舐められた場合、RIGとワクチンの併用療法が推奨されています。

問題は、ワクチン未接種者が狂犬病が疑われる動物に咬まれた場合、狂犬病免疫グロブリン(RIG)を投与すべきであるというところにあります。

狂犬病免疫グロブリン(RIG)の問題点

途上国での狂犬病ワクチンの問題点

  1. 途上国で入手可能な狂犬病ワクチンはヤギ脳由来で不活化したセンプル型のワクチンや、乳のみマウス脳由来で不活化したフェンザリダ型のワクチンである事もあり、これらの動物脳由来ワクチンは、副反応が組織培養のワクチンより強く、効果も弱い。
  2. 温度管理が不適切で効果が減弱している
    アメリカでも7割のクリニックは不適切
  3. ワクチンの期限切れ
    アメリカでも3割のクリニックは期限切れ
  4. 中国製ワクチンと書かれた無効な水である可能性

このような要らぬ心配事を無くすためにも、事前にワクチン接種しておく事をおすすめします。

予防1:狂犬病ワクチン

【東南アジアにおける2012年の時点での動物咬傷の頻度】

incidence of exposure, Risk of Potentially Rabid Animal Exposure among Foreign Travelers in Southeast Asia, PLoS Neglected Tropical Diseases, Sep 2012; 6(9):e1852

1ヶ月以上ハイリスク地域(で免疫グロブリンが手に入りにくい地域(※1))に滞在して街中を歩くような場合は、接種することをおすすめしています。その他、田舎,冒険旅行者,駐在者,布教活動者,そして狂犬病のリスクのある国に住む彼らの家族に対して,曝露前に狂犬病ワクチンを接種することが推奨されています。
※1)シンガポールやタイ、台湾以外

当院の狂犬病ワクチンは、以前は、国産ワクチンの性能が悪かったため、輸入ワクチンを使用していましたが、最近は外国産ワクチンのライセンス製造を国内でできるようになったため、KMB社製の国産狂犬病ワクチン(Rabipure:ラビピュール)を使用しています。

ラビピュール筋注用(輸入認可ワクチン)

PCEC(Purified Chick Embryo Cell) Rabies vaccine
(ニワトリ杯細胞精製ワクチン)

製造会社:グラクソ・スミスクライン株式会社

長らく認可ワクチンでまともなものが出ていませんでしたが、やっと、世界標準のワクチンが認可され、登場しました。しばらく供給体制が悪く、当院では扱っていませんでしたが、最近供給状況が良いので、認可ワクチンであることを鑑み(ひどい卵アレルギーが無い場合は、)コチラをメインに使用しています。

VERORAB(輸入未認可)

Purified inactivated rabies vaccine, prepared on VERO cells.
製造会社:Sanofi Pasteur SA(フランス)

とはいえ、上記国産のラビピュールは供給体制が貧弱なため、もし、流通在庫が枯渇するような場合は、今まで通り、輸入ワクチンも使っていきます。

  • 院内在庫のため即接種開始可能
  • 免疫効果が高い(verorabは現在存在するワクチンの中で最高性能です。)
  • 免疫取得まで 2週間と最短

予防2:狂犬病の動物に咬まれないために

野犬から逃げる/バリ島の住民地域にて

神の使いと扱われている地域もあり、バリやネパールなど、ヒンドゥー教地域では、放し飼いの犬が非常に多く、もちろん、犬に狂犬病ワクチンはほとんど接種されていません。

咬まれる可能性のある動物から逃げる

  • 人が近づいても、凶暴にも臆病にもならず、怖がっているようにも見えない。
  • 夜行性の動物(コウモリ、スカンク、アライグマ、キツネなど)が日中に姿を現す。
  • コウモリが奇妙な音を発し、うまく飛べていない。
  • 挑発していないのに、かみついてくる。
  • 脱力している、あるいは興奮して狂暴である。
  • ピットブルなどには近づかない(目を合わせない)
  • 逃げる時は、ゆっくり、横目で観察しながら離れる。(突然背を向けて逃げると追いかけてくる習性があります。)
    ※米国では、ウサギや大半の小型齧歯類(ハムスター、アレチネズミ、リス、ラット、マウスなど)にかまれても、狂犬病の予防接種はほぼ必要ありません。米国では、狂犬病による死亡例のほとんどは、コウモリが原因です。
    米国での吸血コウモリによる咬傷(かまれた傷)は気づかれないまま放置されることが多くコウモリがいる洞窟や、接触が疑われる場合(たとえば、目が覚めたら部屋の中にコウモリがいた場合)は、暴露後処置を推奨されています。

主な動物の狂犬病症状について

狂犬病ワクチン無効の狂犬病とは?

狂犬病ウイルスの仲間である、ラブドウイルス科リッサウイルス属には、以下の7つの種類がわかっています。

  1. Genotype 1(狂犬病ウイルス:Rabies virus)
  2. Genotype 2(ラゴスコウモリウイルス:Lagos bat virus)
  3. Genotype 3(モコラウイルス:Mokola virus)
  4. Genotype 4(ドゥベンヘイジウイルス:Duvenhage virus)
  5. Genotype 5(ヨーロッパコウモリリッサウイルス1:European bat lyssavirus type 1; EBL1)
  6. Genotype 6(ヨーロッパコウモリリッサウイルス2:European bat lyssavirus type 2; EBL2)
  7. Genotype 7(オーストラリアコウモリリッサウイルス:Australian bat lyssavirus; ABL)

このうち、2)のラゴスコウモリウイルス以外は、ヒトにおいて、狂犬病と同様の症状を引き起こす事が知られています。

狂犬病ワクチンは、このうち、1)と7)には、完全な予防効果が見られ、2)、4)、5)、6)には部分的な交叉反応によるある程度の予防効果が見られていますが、3)モコラウイルスには、予防効果が無いと言われています。

ナイジェリアでのトガリネズミなどから感染するモコラウイルスには、無効

外部リンク

  1. 狂犬病10の事実(厚労省)
  2. 国産狂犬病ワクチンの不安
  3. 狂犬病の恐怖
  4. 最後の悲劇。~インドネシア日記第14話~
  5. バニラで行く年末台湾2013(18)-成田空港健康相談室 (2)
  6. ミルウォーキー・プロトコル
  7. 狂犬病からの生還
  8. 致死率100%の感染症「狂犬病」旅先で野良犬に噛まれて(タイ)
  9. ホーチミンでは1日90人が暴露後接種を受けているが、それでも必要な人の60%にすぎない。2015/8/4
  10. バリ島における狂犬病ワクチン不足
  11. バリ島の恐怖。観光名所でも犬に追い回され咬まれ狂犬病暴露後免疫(台湾人観光客)

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